イベント救護実績|荒川区立 下田臨海学園でのツアーナース常駐

2025年7月20日(日)〜8月7日(木)、静岡県下田市で実施された荒川区立 下田臨海学園の夏季教育旅行に、ケアプロツアーナースの看護師が常駐しました。期間中は保健室を拠点に、日中は活動帯同も組み合わせて児童の健康管理と救護対応を担い、記録・申し送りまで一連の運用を実施いたしました。
具体的に看護師は、夏期施設における教育旅行看護業務(一般競争入札)として、保健室や遊泳場所において、下記の業務を行いました。
(1)児童の健康管理
(2)軽度の病気、怪我に対する応急処置
(3)医療サポート
学園は定員300名(本園舎200名・増設園舎100名)の受け入れ規模を持ち、施設内の避難訓練や海岸活動時の導線確認など、安全面の取り組みが重視されています。地震・津波等の非常時は園内の旧下田東中学校、海岸活動時は下田ビューホテル付近の高台へ誘導する体制が明確に定められておりました。
想定された傷病と対応
現場で頻発したのは、炎天下・海辺環境に伴う熱中症由来の頭痛・倦怠感、そして発熱でした。これらの症状に対しては、保健室での安静・クーリング・補水、必要に応じた処置を迅速に行いました。
事前の想定としては、宿泊施設や海などのシーンごとに、下記のような病気や怪我が考えられました。
◯宿泊施設
- 畳の棘が刺さる
- ホームシック
- 打撲
- 持病(喘息、アレルギー、大腸機能低下等)
◯海
- 履き慣れないビーチサンダルによる靴擦れ
- 熱中症
- 日焼けによる腫れ
- 感染症による発熱
◯花火やスイカ割りのレクリエーション
- 虫刺され
- 花火の火傷
- 擦過傷
- 鼻血
そのため看護業務においては、下記のポイントが重視され、事前の対応や情報共有が心がけられました。
- 保健調査票の情報や教員からの注意すべき児童の情報収集
- 病気や怪我の応急処置に対応できる物品準備
- 近隣医療機関情報と医療機関受診フローの確認
保健調査票や注意するべき児童の情報については、個人情報保護の観点から現地にて施設から書類現物で看護師に共有。物品についても、事前に物品リストを情報共有いたしました。
看護師への依頼は児童からの直接申し出ではなく、必ず教員を介して行う運用とし、平時から連絡のルートを一本化。夜間は「就寝中」掲示の運用で不要な呼び出しを抑えつつも必要時には速やかに対応し、保健室内の3台のベッドと仕切りを活用した隔離レイアウトで発熱した児童にも適切に対応いたしました。
実際の1日の看護師の業務のイメージは下記の通りです。
時間 | 業務・行動等 |
6時 | 起床、身支度、掃除、シーツ交換 |
7時 | 朝食準備、検食、片付け |
8時 | 海に持っていくスポーツドリンクやアイスノン等の準備、クーラーボックス準備 |
9時 | 海に移動 ※児童が保健室にいる場合は保健室待機 |
10時 | 遊泳中の怪我を養護教諭の先生と一緒に対応 |
11時 | 宿舎に戻る |
12時 | 昼食準備、検食、片付け |
13時 | 休憩 ※新たな学校が来た場合は教員らとブリーフィング |
14時 | 海に移動 ※児童が保健室にいる場合は保健室待機 |
15時 | 遊泳中の怪我を養護教諭の先生と一緒に対応 |
16時 | 宿舎に戻る |
17時 | クーラーボックス片付け |
18時 | 夕食準備、検食、片付け |
19時 | 休憩 |
20時 | 傷病記録 |
21時 | 入浴、洗濯 |
22時 | 就寝 |
随時 | 保健室での児童の病気や怪我の対応、必要時は医薬品の購入依頼 |
また、地域医療との連携は事前に整理されており、下田メディカルセンターをはじめ複数の医療機関と連携いたしました。保護者連絡と受診可否の判断、緊急時の救急要請までの判断を、教員・看護師の役割分担に沿って明確にしていたこともあり、傷病発生時のスムーズな対応を実現いたしました。
救護実例
児童は、宿泊を伴う集団生活をすることを通して、規律ある生活態度を身につけますが、普段の生活と異なる環境において、体調を崩すことがあります。
また上記のスケジュールでも記載のあるように、海での水泳は心身を鍛える一方、疲労が重なると免疫が低下し、消化器トラブルや感染症、メンタル不調を招きやすくなります。
実際、期間中の対応は94件にも上り、そのうち病院受診が4件発生したものの、救急要請は0件でした。記録の一例をご紹介します。
高熱への対応
夕方に39℃台後半の発熱と悪寒で保健室に来室。クーリング、経口補水を継続しながら推移を観察しました。受診を検討する段階では、近隣の下田メディカルセンターを優先。家族への連絡・迎えと合流し、その後はご自宅の近所の小児科受診へとつなげました。経過の中では40℃超の局面もありましたが、クーリングの強化と安静の継続で活気も戻り、救急搬送には至りませんでした。
畳のトゲ刺創
夜間に畳のトゲが足底や手指に刺入する事例が続きました。洗浄と刺抜き、必要な保護処置を行い、児童の活動への復帰につなげました。
炎天下の体調不良(海岸活動)
海岸の休憩小屋で安静を確保しながら、クーリングと水分摂取で早期に介入し、症状の悪化を防ぎました。
まとめ
今回のツアーナースでは、救急要請ゼロを維持しつつ、受診4件/対応94件の傷病に対処いたしました。園内(保健室)を中心に、海岸活動や夜間の呼出にも即応できる「連絡の一本化」「現場看護師との情報共有」「地域医療との連携」をあらかじめ整えておくことで、児童の安全と日々の教育活動の両立を実現しました。